Nao Matsuda
曲の中の瞬間瞬間に自分を出せれば
L!EFで叩いてる彼女のスネアの音に惚れ込んだカズトモがすぐにスカウトしたというのも納得。その小さな体から叩き出されているとは思えない…と書きながら、実はあの小さな体でフル・スウィングするからこそ叩き出せるビートなのかもしれないなんて思いも頭をよぎるが、ライブで叩いている姿と音はdiscotortionでも、彼女のメインのバンドであるL!EFでもとにかくカッコいい。そこで彼女にもまずはドラムの話から聞かせてもらうことに。
L!EFで叩くときと、discotortionで叩くときで意識することは違いますか?
ナオ…discotortionの方が好きにできますね。
意外です。ドラムが1台のL!EFの方が自由なのかと思いました。
ナオ…L!EFはひとりだからこそ「ちゃんとしなきゃ」と思うところがあるんです。discotortionはコモさんがいてくれるので曲の中で抜けてもいいし、入りたいときに入ってもいいし、好きにできます。
たしかに最近のライブを観ていると小森くんが土台になっていて、ナオちゃんがその上に乗っかって厚みを加えている印象がありました。そういった役割分担が決まっていたんですね。discotortionに誘われたときのことはおぼえていますか?ツイン・ドラムでやって欲しいと言われてどう思いました?
ナオ…ツイン・ドラムていうか、もう何を言ってるんだろうこの人たちは、という感じでしたね(笑)一番最初に声をかけられたときに言われたのが「ちょっとこのオジさんたちと遊んでみない?」だったし(笑)でも元々、discotortionはずっと好きだったし、すごい憧れのバンドだったから自分がそこで何をすればいいのかさっぱりわからない状態でした。ツイン・ドラムの醍醐味とか、それこそどうしてツイン・ドラムにする必要があるのかとか、とにかくわからなかったですね。
加入したときのメンバー構成は?
ナオ…カズトモくんとコモさんとチカダさんで、ロブさんがいなくてユウさんがほとんど同じ頃に入ってきました。私も入れたのが嬉しいのと、どうしていいのかわからないのと複雑な気持ちでした。みんな何をしたいのだろうって(笑)
ツイン・ドラムで合わせていくことよりも何を求められているのか、何をすればいいのかわからなくて苦労した感じなんですね。
ナオ…そうです。ナオがやることによって何が生まれるのだろうってずっと悩んでました。自分の存在意義とか。いまでも別にそこまでわかっているわけじゃないけど、何となく最初の頃よりは「こういうことがしたいのかな」ということを感じ取れるようになれた気がしますけど、最初は本当に自分が必要なのかなと思うほどでした。
曲はカズトモくんがメインで作っているんですか?
ナオ…カズトモくんが持ってきたものにみんなで合わせていって作っていきます。元となるリズムはコモさんが作ってくれることが多いですね。それに合わせて一緒に叩いたり、抜けたり。でもそういう風にできるようになったのも本当に最近で、最初のうちはコモさんもきっと「ツイン・ドラムって何?」という感じだったと思うのでユニゾンならユニゾンとかしかできなくて。だから最近になって本当に楽しくなってきた、という感じです。
今回のアルバムのレコーディングにはハッタくんとハヤシくんも参加しましたが、レコーディングの前に全員で合わせて演奏することはなかったんですよね?ドラムは一番最初に録るから完成型を知らずにやるわけですよね?
ナオ…はい、わからずにやりました(笑)
できあがったものを聴いてどうでしたか?
ナオ…スタジオでやっている分には4人のメンバーだけでもできるような感じで演奏していたから自分の頭の中ではそれが完成型の音だったのが、アルバムを聴いてみたら「あ、こんな風になったんだ!」というのはありましたね。なんだか2倍嬉しいというか。
アルバムができて、初めて全員でライブもしてみて、手応えや曲の感触が変わってきたところもありますか?
ナオ…やっぱりどんどん楽しくなっていくというか、音が増えていくことによって自分が抜いていいところと、もっと必要なところが出てくるから。ナオの必要なところってきっと曲の中の瞬間瞬間なんじゃないかと思うようになってきて。まぁカズトモくんとかが本当はどういうものを求めているのかはわからないんですけど、自分なりに考えたのは瞬間で自分が出せれば、というのがあって。それには引き算も大切なので、いっぱい弾いてくれる人がいれば大丈夫だって思えて(笑)レコーディングだとそうもいかないんですけどライブだと楽しくなってきます。昨日はさすがに久しぶりのライブだったのでそこまでうまくできなかったんですけど、次は「ここ抜いてもいいのかな」とか「ここはもっとガンと行けばよかった」とか色々とやってみたいことが出てきました。
やっぱりライブをもっとやりたい?
ナオ…そうですね。今回、ライブをしない時期が一年半もあいてしまったんですけど、その間もずっとスタジオは入っていてレコーディングの作業もしていたのでバンドが止まっている感覚はなくて「あ、そんなに期間があいてたんだ」と後から気付いた感じでしたが、でもライブはやっぱりライブだな、と改めて思いました。
発売後にアルバムに対する反応はありますか?
ナオ…友達からメールをもらったり、L!EFのライブをするときにアルバムへの反応をもらったりしました。L!EFで行ったのにdiscotortionへの反響がすごすぎて内心ちょっと複雑な気持ちになっちゃうんですけど(笑)discotortionの評価がすごく高くてL!EFはdiscotortionのドラマーがやってるもう1個のバンド、みたいになっちゃうのはかなりプレッシャーですね。アルバムへの反応は予想以上、いや、予想通りだと思います。カズトモくんはいまどきCDなんて売れないから初回プレスが簡単に売り切れることはないと思ってたみたいだけど、ナオはあの枚数なら絶対に売れると思ってました。元々憧れていたバンドだったのでカズトモくんのやってることにはまちがいがないと思ってますし、discotortionは絶対にカッコいいという自信があるのでこの反応も当たり前かな、と。自分にもらった評価ではなくて、あくまでdiscotortionに対する評価という意味ですけど「当然でしょ!?」という気持ちはあります(笑)
たしかに年内に売り切れれば、なんて思っていたら1、2ヶ月でね。
ナオ…ライブ1本目でCDがあと15枚しかないってどういうこと!?(笑)
今回は曲の方も、遅くて独特なシンコペーションのリフという従来のdisoctortionサウンドからもっとストレートなリズムとそれこそCOWPERSやROCKETFROMTHECRYPTなどを思わせるコード感で聴かせる曲も登場していますが、そういう方向へ向かっていった要因は何だったと思いますか?
ナオ…それはきっとナオとコモさんのせいじゃないかと思います。カズトモくんが曲を持ってきても2人が速いのが好きっていうか、遅いのが苦手なのでだんだんとそういう風になっていったのかもしれません。本当に遅いのが苦手で、どうしていいのかわかんないんです。
やはり遅いビートの「間」が難しいですか?
ナオ…そうなんです。まぁ要は引き出しがないからだと思うんですけど(笑)それが課題なのかもしれないですね。きっとカズトモくんはそういうものも作りたいし、好きなはずだから。そういう遅いところと、ドカーンと爆発的なドラムをきっと求められている気がするんですけど、こっちがいっこうに勉強しないから(笑)